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2011年7月17日 (日曜日)

日月の営業停止から警備業界を読む

 日月警備現金輸送から撤退へ=聴聞で教育義務違反認める(2W_1011/7/12) 
 立川市の日月警備保障立川営業所で現金約6億円が強奪された事件で、同社の営業停止処分をめぐる都公安委員会の聴聞会が12日開かれ、浜野亘秀社長は警視庁が指摘した警備員への教育義務違反などを認めた。聴聞で浜野社長は「現金輸送業務は廃止したい」と話し、今後は工事現場の交通整理などに業務を限定して管理態勢を再構築すると話したという。

  この簡単な報道からは、警備業界の裏事情は見えてこない。
 よって、この業界を知るために、業界の歴史や規模、警備業法関連、警備業務の種別、教育、立ち入り、営業停止などのことを多少勉強しつつ解説したい。

■まず歴史だが、警備業が世間に認知され飛躍するきっかけになったのは昭和39年の東京オリンピックでの選手村警備とされる。
  昭和40年に、TBSで「東京警備指令ザ・ガードマン」が放送された。
 モデルの日本警備保障に提示した題名は「東京用心棒」だったが、同社創始者の飯田亮が「自分たちは『用心棒』ではない」と逆提案した題名が「ザ・ガードマン」だった。その後、連続射殺魔事件、三億円強奪事件、大阪万博などが業界の必要性を世間に知らしめた。「連続射殺魔事件」では警備員二人、タクシー運転手二人が殺害された。
 最後の犯行は、昭和44年4月7日午前1時20分、原宿警察署管内・渋谷区千駄ヶ谷3-7-10「一橋スクールオブビジネス」で、日本警備保障(現SECOM)の警備員、中谷利美隊員(22)が男に銃で3発撃たれ負傷したが、抵抗にひるんだ犯人は山手線反対側の明治神宮方向に逃走した。そして同日午前5時8分、渋谷区代々木1-1の明治神宮北参道入口付近で中野区若宮町2-4-9の幸荘6号に住む深夜喫茶ボーイ、永山則夫(19)が代々木警察署員三名に逮捕された。
 
■その後、この業界は飛躍的発展を遂げ、平成22年12月末現在、国内の警備業者の営業所総数は1万4,287営業所、警備員数は53万6,068人で、3兆数100億円の一大安全産業と言われる。また、この業界はセコム(SECOM)、アルソック(綜合警備保障)、セントラル警備保障(CSP)の三社で大多数を占めている。 (平成22年における警備業の概況
 因みに警察官は約25万人、自衛隊員数は約24万人、タクシー総車両数は約26万台と言われているから、警備員はそれぞれの約二倍となる。

■ところで、警備業社は公安委員会(=警察)から認定を受けて営業している。
 単なる許可証ではない認定証であることから、警備業法警備業法施行令警備業法施行規則のほか、各都道府県毎に警備業法施行細則を定められており、法、規則、細則などで雁字搦めになっている業界ともいえる。 
 もちろん、これは警察法第2条の警察の責務と重なり、国民に安全・安心を有償で提供する業界であることと、安易に営利目的に走りがちな業者へのブレーキ、ハンドルの役割を期待してのことであろう。
 ●警備業法(S47.7.5法律117号)
    http://www.houko.com/00/01/S47/117.HTM
 ●警備業法施行規則(S58.1.10総理府令第一号)
    http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S58/S58F03101000001.html

■その最たる厳しい条文として、
 (警備業務実施の基本原則)第15条
 「警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たっては、この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意するとともに、他人の権利及び自由を侵害し、又は個人若しくは団体の正当な活動に干渉してはならない。」
 と訓示規定がにらみを効かせる。
 裏を返せば、殆どの警備員が警察官の制服に似た服装をして、いかにも特別に権限があるかのように思わせて仕事をしていることや、他人の権利や自由を侵害しがちであることや、個人・団体の正当な活動を干渉しがちであることを示している。

■ここで特別に権限があるかのように思わせていることに関して説明すると、
 警備員は安全や事故防止のために仕事をしているとして、警察官と似た服装をして勤務しているが、特別の権限はなにもない。
 特に①職務質問類似行為 ②取調べ類似行為 ③交通整理類似行為
 
は許されない行為とされる。

■そして、警備業法では、警備業務を1~4号警備に分類している。
 この1号警備、2号警備などの業務種別の呼称は、警備業法第2条(定義)第1項、第1号から第4号までの分類からきている。
 この分類法の先輩は、風俗営業法1号営業(キャバレー)及び2号営業(キャバクラ等社交飲食店)、或いは8号営業(パチンコ店など)の方が古い分類となる。
 これは、きっと警察関係者が把握の都合上、分類したものであろうと想像される。
  横道にそれたが、
  警備業務警備業法第2条(定義)によって1号警備(施設警備)、2号警備(交通誘導・雑踏警備)、3号警備(現金輸送)、4号警備(身辺警護)に分類される。
                    ※混乱するので「機械警備」には触れない。
■これら警備業務に従事させる警備員は、警備員施行規則(教育)第三十八条によって、新任教育30時間以上(基本教育15時間以上、業務別教育15時間以上)、現任教育8時間以上(半期毎、4/1~9/30、10/1~3/31)の教育義務がある。
 
 今回、日月警備が営業停止処分を受けることになったのは、この教育義務違反と言われている。
 警備業者にとって、この新任教育30時間以上や現任教育8時間以上(半期毎)の教育は足かせになっていると言われ、直ぐにも現場に出して利益を上げたい警備業者はこれを懈怠する傾向がある。
 この教育義務違反で、教育懈怠率が営業所の警備員数に応じて5日以上30日以内の営業停止処分を受けることになる。
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■今回、日月警備保障は都内での営業を21日間の営業停止処分だそうだが、21日間も警備員(社員)を遊ばせることになり、結果的には都内の各営業所は閉鎖に追い込まれることになる。
 もっとも、社会的信用を失墜させては仕事にならないから当然といえば当然だ。
 日月警備保障の浜野亘秀社長は「現金輸送業務は廃止したい」と話し、今後は工事現場の交通整理などに業務を限定して管理態勢を再構築するという。K_1
  つまり、これまでの3号警備(現金輸送)中心から、2号警備(交通誘導・雑踏警備)に軸足を移すという意味となる。

■この2号警備(交通誘導)という警備システムは、日本特有のものだそうだ。
 きっと、道路交通法第77条の道路使用許可申請時に交通誘導員を配置することに関連しており、警備業者がこれに目を付け発展した分野と推測する。
 警備員の半数近くが交通誘導員だといわれている。

警備員施行規則(教育)
 第三十八条  法第二十一条第二項 の規定による警備員に対する教育(以下「警備員教育」という。)は、基本教育、業務別教育並びに必要に応じて行う警備業務に関する知識及び技能の向上のための教育とする。
2  基本教育は、警備業務に関する基本的な知識及び技能についての教育とし、次の表の上欄に掲げる警備員(法第二十三条第四項 の合格証明書(以下「合格証明書」という。)の交付を受けている警備員及び指導教育責任者資格者証の交付を受けている警備員を除く。)の区分に応じ、同表の中欄に掲げる教育事項について、同表の下欄に掲げる教育時間数以上行うものとする。
警備員の区分 教育事項 教育時間数
新たに警備業務に従事させようとする警備員 イ 警備業務実施の基本原則に関すること。
ロ 警備員の資質の向上に関すること。
ハ 警備業法その他警備業務の適正な実施に必要な法令に関すること。
ニ 事故の発生時における警察機関への連絡その他応急の措置に関すること。
ホ 護身用具の使用方法その他の護身の方法に関すること。
十五時間(最近三年間に警備業務に従事した期間が通算して一年以上である警備員及び警察官の職にあつた期間が通算して一年以上である警備員にあつては、五時間)
現に警備業務に従事させている警備員 イ 警備業務実施の基本原則に関すること。
ロ 警備業法その他警備業務の適正な実施に必要な法令に関すること。
ハ 事故の発生時における警察機関への連絡その他応急の措置に関すること。
教育期(四月一日から九月三十日までの期間及び十月一日から翌年の三月三十一日までの期間とする。以下同じ。)ごとに、三時間
 業務別教育は、警備員を主として従事させる次の表の上欄に掲げる警備業務の区分に応じ、当該警備業務を適正に実施するため必要な知識及び技能に係る同表の下欄に掲げる教育事項について行う教育とする。
警備業務の区分 教育事項
法第2条第1項第1号の警備業務(機械警備業務を除く。) イ 警備業務対象施設における人又は車両等の出入の管理の方法に関すること。
ロ 巡回の方法に関すること。
ハ 警報装置その他当該警備業務を実施するために使用する機器の使用方法に関すること。
ニ 不審者を発見した場合にとるべき措置に関すること。
ホ その他当該警備業務を適正に実施するため必要な知識及び技能に関すること。
法第2条第1項第2号の警備業務 イ 当該警備業務を適正に実施するため必要な道路交通関係法令に関すること。
ロ 車両及び歩行者の誘導の方法に関すること。
ハ 人又は車両の雑踏する場所における雑踏の整理の方法に関すること。
ニ 当該警備業務を実施するために使用する各種資器材の使用方法に関すること。
ホ その他当該警備業務を適正に実施するため必要な知識及び技能に関すること。
法第2条第1項第3号の警備業務 イ 運搬に使用する車両等の構造及び設備に関すること。
ロ 車両等による伴走の方法に関すること。
ハ 運搬に係る現金、貴金属、美術品等の積卸しに際しての警戒の方法に関すること。
ニ 運搬中における盗難等の事故の発生に際してとるべき措置に関すること。
ホ その他当該警備業務を適正に実施するため必要な知識及び技能に関すること。
法第2条第1項第4号の警備業務 イ 人の身辺における警戒に係る警戒位置その他警戒の方法に関すること。
ロ 当該警備業務を実施するために使用する各種資器材の使用方法に関すること。
ハ 不審者を発見した場合にとるべき措置に関すること。
ニ 人の身体に対する危害の発生を防止するためにとるべき避難等の措置に関すること。
ホ その他当該警備業務を適正に実施するため必要な知識及び技能に関すること。
機械警備業務 イ 当該機械警備業務を実施するために使用する警備業務用機械装置の機能に関すること。
ロ 警備業務用機械装置による警戒及び指令の方法に関すること。
ハ 指令業務に従事する警備員と現場に向かう警備員との間の連絡の方法に関すること。
ニ 基地局において盗難等の事故の発生に関する情報を受信した場合における不審者の発見その他現場における事実の確認の方法に関すること。
ホ その他当該機械警備業務を適正に実施するため必要な知識及び技能に関すること。


■警備業法(抄)
(警備業者等の責務)第21条

 警備業者及び警備員は、警備業務を適正に行うようにするため、警備業務に関する知識及び能力の向上に努めなければならない。

(警備員指導教育責任者)第22条
 警備業者は、営業所(警備員の属しないものを除く。)ごと及び当該営業所において取り扱う警備業務の区分ごとに、警備員の指導及び教育に関する計画を作成し、その計画に基づき警備員を指導し、及び教育する業務で内閣府令で定めるものを行う警備員指導教育責任者を、次項の警備員指導教育責任者資格者証の交付を受けている者のうちから、選任しなければならない。ただし、当該営業所の警備員指導教育責任者として選任した者が欠けるに至ったときは、その日から14日間は、警備員指導教育責任者を選任しておかなくてもよい。
8 警備業者は、国家公安委員会規則で定める期間ごとに、警備員指導教育責任者に選任した者に、公安委員会が国家公安委員会規則で定めるところにより行う警備員の指導及び教育に関する講習を受けさせなければならない

(立入検査)第38条 
 国家公安委員会は、この法律の施行に必要な限度において、警察庁の職員に登録講習機関の事務所に立ち入り、業務の状況又は帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。(立入検査)第47条 公安委員会は、この法律の施行に必要な限度において、警察職員に警備業者の営業所、基地局又は待機所に立ち入り、業務の状況又は帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。 第38条第2項及び第3項の規定は、前項の規定による立入検査について準用する。

(営業の停止等)第49条 
 公安委員会は、警備業者又はその警備員が、この法律、この法律に基づく命令若しくは第17条第1項の規定に基づく都道府県公安委員会規則の規定に違反し、若しくは警備業務に関し他の法令の規定に違反した場合において、警備業務の適正な実施が著しく害されるおそれがあると認められるとき、又は警備業者が前条の規定による指示に違反したときは、当該警備業者に対し、6月以内の期間を定めて当該公安委員会の管轄区域内における警備業務に係る営業の全部又は一部の停止を命ずることができる。 
 公安委員会は、次の各号のいずれかに該当する者があるときは、その者に対し、営業の廃止を命ずることができる。
1.第5条第3項又は第7条第3項の規定による通知を受けて警備業を営んでいる者
2.第8条の規定により認定を取り消されて警備業を営んでいる者
3.前2号に掲げる者のほか、第3条各号(第9号を除く。)のいずれかに該当する者で警備業を営んでいるもの(第4条の認定を受けている者を除く。)

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