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2010年4月 7日 (水曜日)

朝鮮半島の「カプチャン」とは

 朝鮮半島には「カプチャン」という遊びがあるそうだ。

 「カプチャン」とは、甲丈とか等甲とかいう文字をあてるそうだが、同年齢という意味だという。
 儒教の国・韓国では、初対面の人でも同年齢と知ると、悪口雑言のやりとりをする伝統的な遊びがあることを、司馬遼太郎が「街道をゆく」で「耽羅紀行」で紹介していた。
 『耽羅 (たんら) 』とは、「済州島」のこと。
 昔は独立国だった。
 「カプチャン」と同様に、初対面でも「同じ本貫、族譜(ぞくふ)」と知ると、親戚のような交際に発展することと根元は同じなのだろう。
 朝鮮半島の長年の蹂躙し蹂躙されたという土地柄と、奴隷の歴史の中から生まれたものだという。この国の人が初対面の人に愛想笑いをしない理由もここにあると言う
 これも、儒教の伝統の中で育ったことは間違いない。
 司馬遼太郎は、韓国のスチュワーデスが無愛想なことを本の中で指摘していた。
 日本人の礼節が、初対面の相手でも思いやることから始まったことと根本から違う。

 なお、「済州島」では、今から60年前に「四・三事件」という「韓国政府による島民大量虐殺事件」が発生し、島民が日本に大量入国、大量密入国した事実がある。
 長い間、秘密にされていた事件だ。
 2005年の記録では、同島出身の在日は9万9421人、全在日の16.6%にのぼるが、この事件が切っ掛けで入国したのは何%かは不明。
 一世、二世の「済州島」出身のコリアンなら、この事件で入国したと見ていい。
 大正から昭和初期の日韓合併当時のコリアンとは、事情が多少違うようだ。
 そろそろ国民に正確なことを報道し、理解を得る必要があると思うのだが・・・・・

街道をゆく耽羅紀行(たんらきこう)』司馬遼太郎(著)から
 朝鮮儒教は、弊害も多く、たとえば社会を一価値でしめくくろうとするために、朝鮮社会を停頓させた。しかしながら、千年以上も儒教によって耕しつづけてきた社会は、他の文化にはない「父老」といった徳を生むのである。
「済州南部で、そういう人はいませんか」という私の質問に、金成順夫人は、響くように答えてくれた。二人はいらっしゃいます、ということだった。私は、金亨洙翁の横にすわっておられる人がそうではあるまいか、と思った。張準錫氏が、紹介してくれた。
 康昌鶴氏だった。三梅園という農場を経営してい ひとで、童顔だが、気持ちいいほどむによく陽焼けしている。両眼が二重で、口もとに少年のような可愛さがのこっている。--中略--「黒潮」という、土間の席と小座敷をそなえた小料理屋さんがあって、私どもは小座敷のほうに入った。そこへ康昌鶴氏もやってきて、にぎやかになった。酒がまわると、人柄にいよいよ照りが出てきて、みごとな景色になった。
 康昌鶴氏は、私に、「カプチャンというのをご存知ですか」
 と、いう。甲丈とか等甲とかいう文字をあてるそうだが、同年齢という意味だという。 初対面で相手が同年齢とわかると、とたんに敬語がなくなりたがいに無害な悪口雑言のやりとりをする。そのやりとりをもふくめてカプチャンというのである。
 儒教社会は、年齢で拘束される。
 尹学準氏の前掲の本によると、年が倍以上の相手に対して父親に事えるようにし、十歳上だと兄に事えるようにする。五歳上だと肩を並べていいが(友人としてつきあっていいが)ただし一歩さがるようにして待遇する、ということになっている。人中(ひとなか)に入ると、相手の年齢を見て自分の礼をさまざまに変えねばならず、まことに気苦労なものなのである。 
 そこで、同年齢という、上下の礼を用いずに済む相手を発見したとき、よろこびのあまり、爆発的にカプチャンをやる。
 私は、康昌鶴氏の年齢をきいた。丙寅のうまれ、日本でいうと大正15年寅のとし、1926年である。「あっ、姜在彦(カンジェオン)さん」と、私は康昌鶴氏の席からやや遠い場所にすわっているわが友を指さした。そこで、カプチャンは炸裂した。
 おどろいたことに、姜在彦(カンジェオン)さんも相当に戦い、しばしば受け太刀ながら、ときにお面に撃ち込んだりした。
 まことに絶妙な悪口漫才で、録音でもしておけば無形文化財の資料になるのではないかと思われるほどだった。「姜在彦(カン、kwang)という名はギャングと似た音じゃないか」からはじまった。
 姜在彦氏は、髪が多く、かつ黒い。これだけでも悪口のたねになる。 康昌鶴氏は突っこんできて、「その髪じゃ、まだ生枯れと見たわい。未練たらしくまだ人生に悩みがあるだろ。あるなら、おれのとこへ言って来い。ぜんぶ解決してやるよ」といったぐあいである。 姜在彦さんも負けはしなかったが、どうも舌がうまくまわらない。 
「こんな男に言っても壁に言ってるようなものだ」
 とやりかえしたが、日本にながくいてカブチャンの腕を磨いていないために、たじたじのようだった。 

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コメント

 カプチャンとは同年齢の人々の遊びではなく、済州島、全羅道のムラにおける、同年齢の人間関係を指します。日本列島にも、これと同様な人間関係はあり(伊豆半島で は朋輩、壱岐島では同士(ドシ)などと呼ばれています)、司馬の本で書かれているのは、もともとはムラの人間関係であるカプチャンから、同じ年の人と会うとこれと同様に扱いをするという、一種の冗談的な対応です。詳しくは下記の本の拙論参照、『東アジアの間地方交流の過去と現在: 済州と沖縄・奄美を中心にして (琉球大学 人の移動と21世紀のグローバル社会)』津波高志編
 これまでの朝鮮・韓国研究ではカプチャンについてほとんど誰も研究していませんが、実は、ムラのなかの重要な人間関係でした。今日では韓国の村落共同体がなくなってきたことも関係し、プサンなどでは単に仲のいい友達の意味に変わっています。

投稿: 原尻英樹 | 2013年3月13日 (水曜日) 午後 02時57分

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